秘密
◆◆◆






ファミレスを出て国道を道なりに走っていくと、暫くぶりの俺の街。


潮の香りがしてきたかと思うと、道の向こうに海が見えはじめた。


「佐野君!海!海見えてきた!」


俺の後ろで奏がはしゃいだような声を出す。

学校とは別人みたいだ。

かわい。


海岸通りに差し掛かると、太陽に照らされてキラキラと輝く海岸線が見えてきた。


「スゴーイ!キレー!」


奏はさらにはしゃいだ。

連れて来てよかった。

少し遠いけど、ここなら俺達が二人でいても、何の問題も無いし、奏を知ってる奴なんか居ないだろう。


この海を奏に見せてやりたかった。


田舎で何もない所だけど、海はサイコーに綺麗だ。


今は殆ど使われていない、海水浴客用の駐車場にバイクを停めた。


メットを取ると、潮風が顔にあたり、久しぶりに帰って来たんだと実感する。

そう言えば年末に帰ったきりだったな。

後で家にも寄るか。


「奏、疲れたろ?」


後ろを振り返り奏を見ると、既にメットを外していて、海と同じようにキラキラした瞳で海を眺めていた。


「ううん、全然大丈夫!」


と笑う奏。

この顔。

初めて会った時の表情に似てる。


やっぱり連れて来てよかった。


「よいしょ」

「わっ、あっ、ありがと、佐野君…」


奏を抱えてバイクから下ろす。

かなり軽い。

さっきも言ったけど、奏は痩せ気味、あまり強く扱うと壊れそうだ。


「行こうか?」


手を差し出すと、俺の手をじっと見つめた後、ゆっくりと手を近付けてくる。

なぜだろう?

俺と手を繋ぐのが嫌なのか?

近付いて来た手を握ると、奏は顔が赤くなりうつ向いた。


……その反応。

可愛いからやめて。


嫌なんじゃなくて、照れてたのか。

つられて俺も顔が熱くなりそうだ。


奏の手を引き、道路を挟んだ石段から海岸へと降りていく。

奏の長い黒髪が潮風になびいてふわりと流れる。


奏の髪は凄く綺麗だ。


太陽の陽が当たると、風に靡く漆黒の髪、一本一本が青みを帯びてキラキラと輝く。



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