秘密
「じゃ、行ってくる」
「夜道、気を付けてね?後、お土産ね?」
「はいはい…わかってるよ…」
「お母さん、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
お母さんに見送られて私達四人は、花火大会が行われる海岸近くまで歩いていく。
車で行くと道が込んでて先に進めないらしく、歩きの方がいいみたい。
今も道路は車がかなり込み合っていて、県外のナンバーばかり。
その殆どが恐らく花火大会を訪れる人達なんだろうな。
拓也君と美樹ちゃんは、仲良し女の子友達みたいに、街灯に照らされた歩道を手を繋いで、楽しそうにお喋りしながら私と佐野君の前を歩いていく。
私達も二人と同じように手を繋いでいたけど、普段とは違う浴衣姿の佐野君にドキドキしてしまって、美樹ちゃん達みたいにお喋りしながら歩きたいんだけど、変に意識してしまって、佐野君の顔がまともに見れなかった。
だって佐野君……
凄く大人っぽくて、素敵なんだもん。
髪の毛も軽く横にナチュラルに流してあって、いつもは前髪に隠れている綺麗な琥珀色の瞳が露になって、佐野君の整った綺麗な顔をより一層引き立てている。
佐野君ってこんなに格好よかったんだ……
改めて実感してしまった。
「はは…何か、緊張する…」
不意に佐野君がそう言ってきて。
「…え?…何が?」
「今の奏…綺麗過ぎて…緊張する」
「………私も」
「え?」
「…私も…佐野君が素敵過ぎて…緊張してる…」
「はは、素敵って…止めてくれ…奏の方が百倍も綺麗だよ…」
「その倍佐野君の方が素敵だもん」
「いや、奏の方がその何倍も可愛い」
「佐野君の方がもっと、もおっと格好いい」
「違う、奏の方が…」
「ちょっと、二人とも…聞いてるこっちが恥ずかしいから…」
拓也君がこちらを振り向いてそう言って、美樹ちゃんはクスクスと笑っていて、私は佐野君と褒め合いっこしまっている事に気付き、恥ずかしくてうつ向いてしまった。
「だったら耳塞いどけば?貧乳の拓美ちゃん」
「……貧……お前…」
「女の子がお前なんて言っちゃダメだろ?拓美ちゃん」
笑い出す美樹ちゃんに私も笑ってしまった。