秘密




「あ。あれ食いたい…」

「え?まだ何か食べるの?」


焼そばを食べた後の佐野君は、余計に腹が減ってきた。とか言って、たこ焼き、お好み焼き、イカ焼き、ご当地B級グルメ、トウモロコシ、ホットドッグ、次々に夜店の屋台をハシゴしていく。


さっきまでは別人みたいに格好いいと思っていたけど、いつものように大量に食べる佐野君は、やっぱりいつもの佐野君で。


次の屋台に向かう佐野君に手を引かれながら、私はこっちの佐野君が好きだな。なんて思ってしまって、またもや顔が熱くなってしまった。


「ん?今何時だ?」


佐野君が携帯で時間を確認すると。


「やべ、もう直ぐ始まるじゃん、奏、橋渡って向こう岸に行くぞ」


佐野君は踵を返して来た道を戻り始めた。


「橋の上からじゃダメなの?」

「橋の上は人が多すぎて奏が埋もれるだろ?向こう岸はこっちよりかは人が少ないから」


佐野君は歩きながらそう言うと。


「あっ、佐野君発見!おーい」


何処からか美樹ちゃんの声が。


すると美樹ちゃんと拓也君が人込みの中から顔を出して、私達の前までやって来た。


「あはは、佐野君大きいから目立ってわかりやすい、そろそろ始まるでしょ?何処から見るの?」

「向こう岸、て、何?…それ?」


見ると美樹ちゃんと拓也君の両手には、オモチャや食べ物や金魚やお面や、頭の上にはピカピカと光る星の触覚が付いたカチューシャ。


「あは、凄いでしょコレ、一円も使ってないんだよ」

「は?…一円も?」

「うん。拓也と二人でいると、男の子に声かけられまくりで、全部奢ってもらったの♪」

「……美樹ちゃん…拓ちゃんとナンパされに来たのか?」

「違うわよ、失礼ね。でも、癖になりそう…これから時々拓也に女装させようかしら?…ふふふ…」


最近、こんな顔して笑う美樹ちゃんをよく見るなぁ…


「……俺も…癖になりそう…」


………拓也君。
ダメだよ癖になっちゃ…


「美樹ちゃん、雰囲気がカケルさんに似てきてないか?」

「え?ホントに?光栄だわ♪」

「……光栄なのか?」


と、呆れ顔の佐野君。



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