秘密
次に会う時は絶対あいつより高く跳べるようになってやる。
毎日そればかりか考えて身体を虐めぬいた。
そのお陰で中学時代の俺は造り上げられていった。
多分ヨースケとの出合いが無かったら、俺は全国レベルの選手にはなれなかったかったかも知れない。
でも……
ヨースケと再び会えたのに、ヨースケは跳ぶ力を失って、俺はバスケから逃げ出してしまっていた。
二度の手術で俺はバスケを諦めてしまった。
ヨースケは片足を失ってもバスケを諦めていなかった。
そのヨースケがまた再び俺に衝撃を与えにやって来たように感じたんだ。
臆病な俺はまた挫折するのが怖くて、辛い思いをするのが嫌で、そんな臆病者なのに、虚勢を張って、周りから同情されたくないから綺麗事で自分を取り繕っていた。
洋ちゃん。
……俺。
またバスケがやりたい。
ホントは胸の奥底に深く、隠していたんだ。
でも、ボールに触れる度に沸き上がってくる感情を、俺と言う情けなくて臆病な自分が必死にそれを押し込めていたんだ。
ヨースケにまた会えて、あの頃の、ただバスケが当たり前だった生活が急に蘇って来た。
バスケがしたい………
ただそれだけ。
ボールを片手に持ち変えて、床に落とすとボールは素直にまた俺の手の中に跳ね返ってくる。
ティン、ティン、と誰も居ない体育館にボールを弾く乾いた音が響く。
ドリブルしながらゆっくりと走り出す。
キュッキュッ、とバッシュが床を擦る音。
もうヨースケが出せなくなった音。
俺には出せる。
俺は走れる。
俺は跳べる。
リングに向かって。
また走りたいんだ。
また跳びたいんだ。
ヨースケだって今も走り続けてる。
跳ぶ事は出来なくなってしまったけど。
跳べなくなった代わりにそれを補う為の車椅子と言うヨースケの足。
ヨースケは今でも俺の憧れ。
唯一尊敬してる俺の英雄。
あの頃のまま。
それは今も変わらない。