秘密





「……ラスト、500っ!」


マサトが放った最後のボールはリングに吸い込まれていった。


「っし!」


片手でグッと拳を作り小さくガッツポーズ。


弾むボールを俺は拾った。


「お疲れ、凄い集中力だな?全く、二年のマサトは早くから一人でやってんのに、三年のあいつ等はどうした?」


マサトはTシャツを捲り上げて顔の汗を拭いながら。


「先輩達は、俺達が帰った後も夜遅くまで練習してるんです、ほぼ丸一日練習してます」

「……そうか」

「俺ももっと練習したいんですけど、身体を休める事も大切だ、とか言って…なのに先輩達は遅くまで…自分達ばかりズルいです…」


リョータ達三年は身体もデカいからそれなりにスタミナもあるだろう、でも、下級生達はまだ成長過程。

一年の差は大きい。

あまり身体に負担をかけるとかえってよくない。


って、言ってやればいいのに。


とか思うけど、俺も中学の頃はそうだったなと思い出し笑い。


「リョータ達の言う通りだ。身体を休めるのも凄く大事な事だ、夜休んでる間に背は伸びるんだ、お前一ヶ月で随分背伸びたな?」


言いながらマサトの頭に手を置く。


「はい。5センチ伸びました!夜中骨がミシミシ言って、時々痛くて…」

「ははは、だろ?だから、今の時期にあまりハードな練習すると背が伸びにくくなる」

「……先輩達は俺達の事、考えてくれてるんですね…」

「うん。だから、ズルいとか思うなよ?」

「はいっ!わかりました!」


素直で可愛いマサト。

リョータ達はきっとお前に期待してる。

だから、大事にされてるんだ。
お前も来年はそんな風に後輩を引っ張って行くんだぞ?


「あの…佐野先輩…」

「ん?何?」

「お願いがあるんですけど…」

「お願い?」

「…俺と…1on1…やって下さい!お願いしますっ」


身体を曲げてそう言うマサト。


「……いいけど、手加減しないよ?」


「臨むところです!」


ガバッと顔を上げて挑むような目で俺を見るマサト。


今の俺には眩しすぎる位のいい顔だ。



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