秘密
◇第16話◇
◆◆◆






7月最後の日。
寝不足でダルい身体を引きずりつつ、やっと学校にたどり着き、上履きに履き替えていたら。


「茜っ!おっはよー!」


貴司が背中に飛び乗ってきた。


「重い…、どけ」

「あれ?茜なんか焼けてね?海?」

「重いって」

「俺なんか沖縄行くもんねー!」

「降りろ」

「そんで、ひと夏の経験…!」

「人の話を……、聞けっ」


貴司の腕を掴みそのまま背負い投げ。


「ぐはっ!」


バンッ。と下駄箱の下のスノコに背中を思いきりぶつけた貴司。


よい子は真似しちゃダメだぞ?


「いってぇ〜…茜っ!なんて事すんだよっ!下手すると死んでるぞ!俺!」

「見事な一本背負いね」

「あ…、おはよ。沢田」

「おはよう。佐野君、登校日とかタルいよねー。ちょっと、宮地。いつまで寝てんのよ。邪魔」


冷たく見下ろす沢田に貴司が。


「……お前…、今時女子高生がくまのバックプリントは無いだろ?」

「なっ!何見てんのよっ!!バカッ!!」


へぇー。
沢田はくまのバックプリントなんだ。


「やっぱ俺は清楚な白だな」


スノコに寝たまま腕組して、うんうんと頷く貴司みぞおちに、沢田の鋭い踵が振り下ろされた。


「ぐふうぅっ!!」

「変態っ!」


沢田は叫ぶと走り去って行ってしまった。


沢田。
明日から白パンツだな。


なんて思いながら沢田の背中を見送り、貴司の腕を掴み起き上がらせた。


「ゴホッ!ゴホッ!凶暴な女だな」

「貴司が悪い、そこは見て見ぬふりしないと」

「だって、色気無さすぎだろ?くまだぜ?くま!しかも黄色!あり得なくね?」

「いいじゃん、くまでも黄色でも…」

「いーや!白だ!」


…いいじゃん、どうでも。


大事なのは中身だ。


「何が白なの?」


と後ろから聞こえたのは愛しい声。




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