秘密
「はぁ……」
誰にも気付かれないように小さくひとつ溜め息をつく。
色々考えたってどうしようもない。
今はそんな事考えるより勉強だ。
先ずはそれが先決。
「ほらみんな、暑いからってだらけんなー。今から夏休み明けの実力テストの範囲配るからなー」
「「「「「「「うげぇぇぇーーっ!!」
担任の言葉に声を揃えるクラスメイトを他所に担任は前の席にプリントを配りながら。
「うるさい。はい後ろに回せー、あのな?二年は気が抜ける時期だけど、今がいちばん大事な時期でもあるんだ、この一年をどうやって過ごすかによって受験の合格率もグッと上がるんだぞ?再来年の春はみんなサクラ咲かせたいだろ?」
配り終り担任は教壇の上に立つ。
「夏休み明けたらまた進路調査するから、この夏休みの間に変更とかあるだろうし、自分が何をしたいのか、何を学びたいのか、どんな職業に就きたいのか、じっくり考えとけよ?」
担任が言い終わると丁度チャイムが鳴り。
「はい。じゃ、これで終り。夏バテすんなよ?」
「「「「「「「はーーい」
担任が教室から出ていくと直ぐに貴司が俺の机に寄ってきて。
「茜ー」
「断る」
「は?まだ何も言ってないじゃん」
「合コンは断る」
「ちげーよ、でも夏休み中に一回位は……」
「だが断る」
「ちっ、わかったよ。って、違う!俺が聞きたかったのはコレ!」
貴司はシャツのポケットから何かを取り出し、俺の机の上にバンッと叩き付けた。
「何?」
見てみるとそれは写真。
「ぶっ……」
思わず吹き出してしまいそうになって慌て口を片手で塞ぐ。
「その子、この学校の子らしいんだけど、そんな綺麗な子居たっけ?俺、学校中の美少女は把握してるつもりなんだけど、その子、俺の脳内USBに無いんだよねー、茜、知ってる?その子」
知ってるも何も……
「佐野ーっ」
俺を呼ぶ声に顔を上げると、戸口からこの写真に写る浴衣美人がこちらに向かって歩いて来た。