秘密




決めた。



今日ハッキリと佑樹に話をつける。



土下座だってなんだってしてやる。



奏と一緒に過ごせるのなら、なんだってやるさ。



「カケルさんってさ…、いい男だね」


「は?いきなり何そんな当たり前の事言ってんの?お前」



カケルは意地悪や興味本意で言ってるんじゃなくて、ヘタレでガキな俺の背中を押してくれようとしているんだ。



何だかんだと言って、いつも俺はカケルの世話になっている気がする。



見た目チャラくて腹黒な所もあるけど、俺なんかよりずっと大人で、自分の夢を叶えて、立派に経営者としてやっているカケルの足元にも及ばないな、俺は。



俺も早くそんな男になりたいけど、所詮まだまだガキだ。



でもガキだからこそ。
素直に、自分に正直に。



「俺、奏が好きだ」



俺はそう言ってベンチから立ち上がり。



「行ってくるよ、カケルさん」.


「おう。頑張れ」


「じゃあね」


「あ。奏ちゃんに伝えて。ゆっくり身体を治してまたバイト頑張って欲しいって、うちの看板娘が居なくてみんな寂しがってる」


「うん。分かった」


「茜…、お前も十分いい男だよ」


「はは。ありがと」


「俺程では無いけどな?」


「それもわかってる」


「お?やけに素直じゃん」


「まだ子供だからね」


「それでいいんだよ、引き止めたりして悪かったな、行ってこい」


「うん」



そこでカケルと別れ、再び来た道を戻り、外科病棟へと向かう。



そう簡単にはいかないかも知れない。



けど、何故だかふっ切れたような気持ちになって、心の中は軽くなっていた。






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