秘密
洋介さんがバッグの中から出した物は、バスケットボールとグリーンの色が鮮やかなバッシュだった。
「コレ……、俺に?」
「多分サイズは合う筈だ」
洋介さんは椅子から降りてマサキ君の横にしゃがみこんで、そのバッシュをマサキ君の両足に履かせた。
「ほら、ピッタリだ」
マサキ君は自分の両足を眺めながら。
「俺……、靴履いたの…事故以来だ…」
「このバッシュ、俺が足を無くす前に履いてたやつだ、お前にやるよ。ボールはオプションだ」
洋介さんは座ったまま、笑顔でマサキ君を見上げた。
「また、走るんだろ?」
「うん!ありがとう。洋介さん!」
歩けないマサキ君に靴をお見舞いに……
なんて思ってしまったけど、洋介さんはマサキ君に足が無くても走れるんだって事を証明してみせた。
そんな二人にしかわからない、繋がりみたいなものが感じられて、きっとマサキ君は洋介さんみたいに、また走れるようになるに違いない。
「マサキ君、とても似合ってるよ、そのバッシュ」
「へへへ…そうかな?」
「うん。カッコいい」
「まあ、俺程では無いけどな?あははは」
笑う洋介さんに、私達も同じように笑った。
それからおばあちゃんや洋介さんと話してる内に、私のうちの近所の公園近くにおばあちゃんはひとりで住んで居る事や、私がおばあちゃんのうちによく遊びに行っていた事。同じクラスの宮地くんのおばあちゃんでもある事。
佐野君もおばあちゃんのうちによく訪れると言う事。
そんな事が会話の流れで読み取る事が出来た。
佐野君が今どうしているのか、洋介さんなら知ってるかな?
もしかして、ホントに寝込んだりしてなんかいないよね?
私は姿を見せなくなった佐野君の事が心配で、洋介さんに聞いてみる事にした。
「あの…、洋介さん…佐野君は今どうしてますか?」
「は?佐野?どうしてるって…何で?」
「このところ…、佐野君来てないんです…、もしかしたら病気かなって…心配してたんです」
「え?来てない?佐野とは最近毎日会ってるけど、俺」