秘密
佐野君。
病気とかじゃないんだ…
……よかった。
でも、それなら何で急に来てくれなくなったんだろう?
「何で来ないんだ?佐野のやつ……、今日も俺の練習に付き合ってくれたよ、あいつ」
「練習?」
「うん。今猛特訓中なんだ、俺」
「特訓って……、バスケットですか?」
「勿論、あいつ、ボール持つと容赦ないから、もう俺、毎日クタクタでさ、ははは」
「洋介さん、毎日そんなに練習してるの?」
マサキ君の質問に洋介さんは。
「あれ?言ってなかったっけ?俺、車椅子バスケでパラリンピック日本代表の強化選手に選出されたんだよ」
え……?
……パラリンピック?
それって……
「聞いてないよーっ!パラリンピックって!スゲーじゃん!洋介さん!」
ホントに……、凄い。
「洋介さん、おめでとうございます。パラリンピックなんて、洋介さんがそこまで凄い人だったなんて、知りませんでした」
「ははは、ありがと、奏ちゃん。でも強化選手に選ばれただけだから、本当に選手に選ばれるかは、合宿にかかってるんだ、だから今はバイトもそこそこに、練習ばっかで、佐野にしごかれてるよ」
そうだったんだ。
だから佐野君は来なくなってたのか。
でも、佐野君にしごかれてるって……
「あの…、洋介さん、佐野君も車椅子バスケットやってるんですか?」
車椅子バスケットって普通の健常者でもやってる人がいるのかな?
「は?何言ってんの奏ちゃん、そんな訳ないでしょ?あいつ今は……って、奏ちゃん、佐野がバスケやってた事は覚えてないの?あいつから聞いてない?」
佐野君とそんな話はした事がなかったから、私は首を横に振った。
「そうか……、じゃ、俺が余計な事は言わない方がいいな…」
佐野君の事に関して敏感になってしまっている私は、洋介さんが余計な事と言っている事柄が、どうしても気になってしまって。
「洋介さん、佐野君がバスケットやってたって事、もっと詳しく教えてください」
洋介さんにそう訊ねてしまっていた。
洋介さんは私の目をじっと見つめて何やら考え込んでいる様子。
それから洋介さんはおばあちゃんに視線を移して。
「ばあちゃん、俺、奏ちゃんと話しするから、ちょっと席はずすね。マサキ、お前もここで待ってて。あっちに行こうか?奏ちゃん」
洋介さんは少し離れた空いたテーブルを指差し、そちらの方のテーブルに移動して、私達は向かい合わせて座る。
「……佐野はね、バスケやってたヤツなら、数年前は知らないヤツは居ないって位有名だったんだよ…」
洋介さんは佐野君とバスケットについて私に話してくれた。