秘密







二年連続の全国大会決勝戦出場。


その間に膝の靭帯断絶。


1年がかりで復帰して、さらに二度目の同じ怪我。


それから佐野君はバスケットから離れ、地元の高校へは進学せず、遠く離れた、スポーツが盛んではない今私達が通う高校へと進学したのだと言う。


洋介さんから聞いた話は私が想像もしていなかったもので、佐野君がそんなに凄い選手だったなんて信じられなかったけど、私は黙って洋介さんの話を聞いていた。


「まぁ、俺が知ってる事は、この位かな…」


洋介さんがそこまで話し終えると、私は初めて口を開いた。


「……佐野君は、怪我が原因でバスケットをやめちゃったんですか?」

「それだけが原因ならいいんだけどね……」

「それだけじゃないんですか?」


意味深な洋介さんの言い方が気になって、私はさらに質問していた。


「あのさ…、奏ちゃん」


洋介さんは私の質問には応えずに、何やら言いにくそうに私にそう言ってきた。


「佐野は、きっと誰よりもバスケが好きなんだよ、これは間違いない」

「……はい」

「だけど、それと同じ位に大切なものがあるんだよ…」


洋介さんは何が言いたいんだろうか?


「その大切なものを選んでしまうと、佐野はバスケを続けていく事が無理みたいで…」

「……佐野君は、今でもバスケットを続けたいって思ってるって事ですか?」

「佐野から直接そう聞いた訳じゃないけど、あいつを見てて…、俺はそう強く感じるよ…」


マサキ君と洋介さんにしかわからない繋がりや、佐野君と洋介さんにしか感じられないバスケットへの思い。


あのパラリンピックの強化選手に選ばれる程の洋介さんが、佐野君の事をそこまで言うのだから、佐野君がもしかしたらバスケットを続けていれば、今頃はきっと凄い選手になっていたに違いない。


「……佐野君の大切なものって何ですか?」


佐野君の断りも無しに、そこまで踏み込んでしまってもいいのかわからないけど、どうしても気になって、私は洋介さんそう聞いた。



< 597 / 647 >

この作品をシェア

pagetop