秘密
二年連続の全国大会決勝戦出場。
その間に膝の靭帯断絶。
1年がかりで復帰して、さらに二度目の同じ怪我。
それから佐野君はバスケットから離れ、地元の高校へは進学せず、遠く離れた、スポーツが盛んではない今私達が通う高校へと進学したのだと言う。
洋介さんから聞いた話は私が想像もしていなかったもので、佐野君がそんなに凄い選手だったなんて信じられなかったけど、私は黙って洋介さんの話を聞いていた。
「まぁ、俺が知ってる事は、この位かな…」
洋介さんがそこまで話し終えると、私は初めて口を開いた。
「……佐野君は、怪我が原因でバスケットをやめちゃったんですか?」
「それだけが原因ならいいんだけどね……」
「それだけじゃないんですか?」
意味深な洋介さんの言い方が気になって、私はさらに質問していた。
「あのさ…、奏ちゃん」
洋介さんは私の質問には応えずに、何やら言いにくそうに私にそう言ってきた。
「佐野は、きっと誰よりもバスケが好きなんだよ、これは間違いない」
「……はい」
「だけど、それと同じ位に大切なものがあるんだよ…」
洋介さんは何が言いたいんだろうか?
「その大切なものを選んでしまうと、佐野はバスケを続けていく事が無理みたいで…」
「……佐野君は、今でもバスケットを続けたいって思ってるって事ですか?」
「佐野から直接そう聞いた訳じゃないけど、あいつを見てて…、俺はそう強く感じるよ…」
マサキ君と洋介さんにしかわからない繋がりや、佐野君と洋介さんにしか感じられないバスケットへの思い。
あのパラリンピックの強化選手に選ばれる程の洋介さんが、佐野君の事をそこまで言うのだから、佐野君がもしかしたらバスケットを続けていれば、今頃はきっと凄い選手になっていたに違いない。
「……佐野君の大切なものって何ですか?」
佐野君の断りも無しに、そこまで踏み込んでしまってもいいのかわからないけど、どうしても気になって、私は洋介さんそう聞いた。