秘密
◇第3話◇
◆◆◆





奏が来ない。


1時間目の授業が始まっても登校してこない奏の事が心配で、俺は机の下でカチカチとメールを打っていた。

昨日、馴れないバイクで遠出したから疲れたのかな?

『具合悪いの?

大丈夫?』

それだけ打つとメールを送信。

すぐさま携帯が振動して、開いて見ると奏からの返信。


『大丈夫だよ

ちょっと寝坊しただけ
今から行くつもり』

『昨日の遠出で疲れたんだろ?

無理するなよ?

そのまま休んじゃえ(笑)』

『少し疲れたかも?
…お尻痛いし…

嘘だよ(笑)

今から家出ます
また後でね』

『うん。待ってる』


携帯を閉じてポケットにしまう。


やっぱり疲れてたんだ。

俺の部活でつちかった体力と奏の体力は全然違うんだよね?

…奏細いし…

今度はからは気を付けよう。


それにしても昨日の奏…
ヤバイ位可愛かったし。

学校では大人びた美人なんだけど、なんかこう…萌えたね。ははは。


バカ静の奴…
お兄ちゃんだと?ふざけるな。
あいつに妹萌えの趣味があったとは…

ソレ系のDVDを昨日兄貴の部屋で発見してしまった。

……気を付けよう。

なるべく兄貴に奏を近付けないようにしないと。


机の上に頭をつけて、空席の奏の席に顔を向ける。

いつもあるはずの奏の綺麗な横顔がそこにはなくて、それだけで胸に穴が空いたようにやる気がなくなる。


昨日ずっと一緒に居たのに。


「こらっ!佐野!寝るな!」

黒板の前に立つ教師が俺の名前を呼んだ。

あれ?今何の授業だっけ?

ははは。俺の机の上、何も出てねぇし。


「…寝てませんよ?ははは」

「嘘つけ、全く、前来てコレやれ」

先生が黒板をチョークでカツカツと叩く。


何だ、1時間目は数学か。

古典じゃなくてよかった。

…ホッ。

こう見えて俺は理数系。
数学は得意な方だ、はは。楽勝。


前に出て問題をスラスラと解く俺。
ツッコめなくて残念だったね?先生?

チョークを置き、パンパンと手をはたく。


…はぁ。

奏…早く来ないかな?


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