秘密
翌朝。
私はお弁当を3つ作った。
私とお父さんのお弁当と、そして佐野君のお弁当。
まともな食事はバイト先の賄いって言ってた。
あんなに沢山食べるのに、お家でご飯どうやってるんだろう?
お昼休みはコンビニの袋を下げて、直ぐに何処かへ行ってしまう佐野君。
毎日コンビニのパンやおにぎりだけじゃ、栄養が偏ってしまうんじゃないかと心配になる。
昨日、カレーをあんなに喜んで食べてくれた。
もっと佐野君を喜ばせたい。
違うな、私が佐野君の喜ぶ顔が見たいんだ。
差し出がましい事かも知れないけれど、きっと佐野君は喜んでくれるはず。
……そう思いたい。
出張のお父さんと佐野君の分のお弁当は、器が処分出来るように、使い捨ての容器にお弁当を詰めた。
いつもより早めに家を出て、目指すは近所のコンビニ。
コンビニの裏には確かにアパートがある、まさかそこが佐野君の家だったなんて…
部屋番号わかるかな?
集合ポストがあればわかるだろうけど、もしなかったら、ドアをひとつひとつ見ていくしかないな。
アパートに着くと急に緊張してきた。
三階建てのアパート。
駐輪場に佐野君のバイクを見つけて、急に胸がドキドキしてきた。
集合ポストは無いみたい…
よし。ドアを見ていこう。
まずは一階から見てみたけど、佐野君の部屋は発見出来ずその次に二階へと上がり、一番奥から見ていく事に。
なんか不審者と思われないかな?
そんな事を考えながら、奥のドアを見ると、表札に【佐野】と書かれていた。
佐野君はいつもギリギリに登校してくるから、まだ家に居るはず。
チャイムに手を伸ばしたけど、やめてドアノブにお弁当を入れた紙袋をさげた。
喜んでくれるだろうとは思うけど、急に不安になってしまった。
…お弁当なんてウザがれないかな?
…引かれたりしないよね?
暫くドアの前に立っていたけど、バスの時間もあるから、ドアにかけたお弁当を見送って、バス停へと向かう。
また家の方に戻るより、バス停一駅分歩く事にした。
…お弁当…置いてきちゃった。
佐野君…私だって気付くかな?
食べてくれるかな?
喜んでくれるかな?