魔憑攻殼戦記 深紅の刃
「なっ!」

 瞬間的に跳ね上がってくる深紅の太刀に、ぎりぎり反応し、インジェンは飛び上がりながら右手の緑の爪で受けた。

 今まで感じた事の無い力が、爪を通してインジェンに伝わってくる。

「馬鹿な、こんな力はありえ……」

「まずい、魔に過剰防衛反応が!
魔操を解除しろ、喰われるぞ!」

「ぐおおおっ」

 インジェンには判った。

 魔が怯えている。

 怯えて力を欲しがっている。

 だが、封魔球の開封度は限界の三段階目。

 これ以上は引き出せない。

 そして魔は、身近な物で代用しようとした。

 それは……

 インジェンの左腕が、いきなり消失した。

「がっ!」

 鮮血が操室内に溢れる。

「インジェン!」

 ハイロウが叫ぶ。

 しかし、それでも力は足りなかった。

 一瞬の均衡の後、緑の爪は砕け散った。

 深紅の刃は、その圧倒的な力で空間に生じた衝撃波を引き摺りながら、魔憑攻殻の腹部装甲から頭部までを切り裂いた。

 切り裂きながら、衝撃波が荒れ狂い、攻殻は爆散した。

 残骸が地に落ちたと同時に、凛の魔憑攻殻も、立ったまま動きを止めた。

 攻殼が活動限界に達したのだ。
< 17 / 24 >

この作品をシェア

pagetop