魔憑攻殼戦記 深紅の刃
 凛は、ショートカットの赤い髪を振り乱して、ゆっくりと目を開けた。

「ふう、やっぱ、きついな」

 黒い瞳が、心配そうに見詰めている狼藍を見据えて言った。

「一小節でこの有り様じゃ、まだ実戦的じゃないなぁ」

「でも、攻殻の性能差を埋めるにはこれしかない。
最初の時よりマシになってきたし」

「まあ、確かに最初は、凛が三日間意識不明になったものね」

「うん、あれはひどかったよ。
それにしても、出力比は三段階目のおよそ一〇倍……一撃でこれか」

 凛は、バラバラになった甲虫型攻殻の残骸を見て言った。

 装甲や骨格が散らばっている。

 赤い循環液で周囲は真っ赤だ。

 まるで血の海だなと、彼女は思った。

 この中にインジェン達も混ざってる事を思い出し、気分が悪くなった。

「どうした、少し顔色が悪いぞ」

「ちょっとね、インジェンの事を考えてた」

「同期の中では特に親しくは無かったが、よく模擬戦をしたっけか」

「あなたは……そうね」

 ふと、凛の表情が曇ったが、狼藍は気付かなかったようだ。
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