魔憑攻殼戦記 深紅の刃
「まもなく反乱勢力域に入る。
低高度による威力偵察を行う。
開封度二半を維持、後の開封度調整は任せる」

 魔操士は、開封士に告げると、すべての意識を魔に集中した。

「了解。
それが仕事だ、任せろ」

 開封士は、補助詠唱器を作動、それまでの詠唱を引き継がせ、念波の中継を任せる。

 これで開封呪の詠唱に専念でき、開封度を即応で調整できる。

 魔憑攻殼が、二〇〇パイクから三パイクまで高度を下げる。

 深い森の木々を排障結界で薙ぎ倒し、速度を落とさず奥に進む。

「森が深いな、そろそろ排障結界の限界だ」

 開封士は結界器の負荷を確かめつつ言った。

「そうか、一度高度を取るぞ」

「そうしてくれ、今のところ驚異となる反応も無い」

 魔操士は開封士の言葉を受けて、両翼の羽ばたきを意識した。

 自分の身体に無い器官の感覚というのは、いつ感じても気持ちのいいものではなかった。

 常に意識していないと、感覚を喪失してしまいそうだった。

 感覚を喪失するということは、その器官の停止を意味する。

 実際には、開封士が感覚補助の術式を絶えず行っているので、感覚喪失というのは起きないのだが。
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