魔憑攻殼戦記 深紅の刃
「あそこか。
今は何も見えないな。
これより接近する」

 魔憑攻殼は、一〇〇パイクの高度から、深い森の中へ亜音速降下した。

 地面すれすれを飛行し、その場所に出た。

 森の壁を突破して出てきた場所は、張り出した巨木の枝で空を覆われた森の中の空洞だった。

 半径は一〇パイクあまりの巨大な広場だ。

「こんな場所があるなんてな。
空からじゃ判らんわけだ」

 魔操士は、慎重に周囲を伺いつつ着地した。

「何か捉えられるか?」

 魔操士は第三段階詠唱を専用の補助詠唱器に任せ、魔憑攻殼の知覚系を周囲に走らせている開封士に訊いた。

「温度分布に斑があるな。
さっきまで何かがいたみたいだ」

「ほう」

 魔操士に緊張が走る。

 それに反応して、魔憑攻殼が身震いする。

 魔が戦いたがっているのだ。

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