赤い狼 弐
塚、優悪が居なかったら私はとっくにノイローゼになっていただろう。
優悪が
「大丈夫か?稚春、無理しなくてぃぃんだぞ。」
と言ってくれていたのが唯一の救いだった。
あれが無かったらとっくの昔にトンズラこく処だった。
本当、優悪には感謝だ。
「これじゃぁ、楽しみにし過ぎて眠れなかったのが馬鹿馬鹿しい…。」
「え?楽しみにし過ぎて眠れなかったのか?」
「えっ?」
突然の声に、後を付いてきているリムジンから隣で運転をしている朋さんの方に視線を向ける。
「楽しみにし過ぎて眠れなかったのか?」
朋さんは私が聞いてなかったと思ったのか、さっきと同じ質問を投げ掛けてくる。
「…私、口に出してましたか?」
「出てた。」
無意識だったのか?
と優しく笑って私を見てくる朋さん。
「ちゃんと前見て下さい!事故ります!」
「はいはい。分かった、分かった。前向くって。で、楽しかったか?」
ハハッと目を細めて笑う仕草は、何処かで見た事あるような大人な仕草。
…あ、茂さんに似てるな。
そんな事をボンヤリと思いながら返事をする。
「はい…。楽しかったです。」
滅茶苦茶だったけど。
とても買い物とは言えない買い物だったけど。
「ぃぃ思い出が出来ました。」