赤い狼 弐






「私、居ない事にしてっ!」




嫌な予感がしたと共に、毛布に潜り込んで姿を消す。




そして一分も経たない内に…




「稚春!お前二度も同じ事言わせる気かっ!」




悪魔の声が聞こえてきた。




いや、普段は悪魔じゃないんだけどね。



今は悪魔の声に聞こえるんだよ。



「稚春、呼ばれてるぞ。」




何処からか帰ってきた陽が毛布に潜り込んでいる私に向かって声を掛ける。




止めてくれ。



今、声を掛けないでくれ。




毛布の中で目を瞑って心の中で懇願する。




けど…




「稚春、呼ばれてるぞ?」




陽は私が寝ていて聞いてないと思ったらしく、もう一度話し掛けてきた。



しかも、今度は毛布をちゃんと捲って。





…終わった。





「稚春、居るじゃねぇか。返事しろ。」



「はい…。ごめんなさい…。」



とてつもなく睨んで近付いてくる鬼…。




いや、悪魔。



…どっちでもぃぃけど、とにかく恐いのは確か。



この前もこんな光景を見た。



あれはババ抜き大会の最中に…。




あぁ。


同じ事を二回もしてしまった。


これは、





「稚春、聞いてんのか。」



絶対に



「は…い…。」




怒られる。






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