赤い狼 弐
「隼人!お前、早ぇーって。」
「稚春、見付かったか!?」
「俊足の俺を抜かすなんて、隼人やるねー。」
「稚春~、大丈夫っ!?」
声がした方に視線を向けると、棗達が部屋の入り口付近に居た。
皆、もしかして私を探してた…?
「あ…せだくだよ?」
「皆、稚春を探してた。」
驚いて目を見開いていると目の前まで来た隼人が私の頬に右手を添えて親指で優しく撫でる。
そして…
――パシンッ――
乾いた音と共に、私の頬に鈍い痛みが走った。
「…っ。」
突然の痛みに顔を顰める。
痛い…。
まだ鈍い痛みを帯びている頬に手で擦ってみる。
…あぁ。私、叩かれたのか。
頬を擦りながらユルユルと自分が隼人に叩かれた事を認識する。
「お前っ、何してんだ!」
棗が慌てて隼人をその場から引き離そうとする。
「お前…、どんだけ心配させれば気が済むんだ!」
棗を押し退けて近付いてくる隼人。
…隼人が珍しく本気で怒ってる。
「ごめっ、なさっ…「謝んなら最初っからすんなっ!」」
――ビクッ――
隼人の怒鳴り声で体が大きく反応する。