赤い狼 弐
――ドクッ、ドクッ、ドクッ――
ま、さか――
そんな筈…
「おぉ。帰ってきたんか。お疲れやったな。
"祐(ゆう)"」
…――――っ!
体が凍ったように動かない。
…逢えた。
「もう本当に人使い荒いんスから。」
逢えた。
「そんな事言わんといて。龍ちゃん傷付くわよ。」
「どうぞ傷付いて下さい。」
「お前っ、相変わらずやな。」
「まぁね。つぅーか…どうしたんですか?何か不穏な雰囲気なんですけど。」
ドア付近に居た人が覗くようにしてこっちを見る。
…そして、"その人"と目が合った。
「…稚春っ?」
…やっと、逢えた。
「えっ?祐、稚春の事知っとるんか?」
そのまま視線をお互い離さずに見つめ合う。
やっと…逢えたね…。
出ない声を無理やり絞り出す。
「祐……お兄ちゃ…ん」
私の……一番大切な、逢いたかった人。
赤い狼 弐
―完―