顧問と私たちと旅行部な時間
 放課後、八坂那歩は職員室を訪れていた。


 職員室の戸を開け中を見回すが、目的の人物が見つからない。そこで、入り口側にいた女教師に声をかけた。


「あの、コージ……神田先生はいませんか?」


「神田先生なら普段、社会課準備室にいるわよ」


「分かりました~。失礼します」


 女教師に一礼して職員室を出ると、那歩は校舎の最上階である3階の社会課準備室へ向かった。


 多くの研究室のほか、科学室、家庭科室などの専門教科の教室や、生徒会室などがある3階は、昼間は一般に生徒たちで賑わうことはほとんどない。

 しかし、放課後にもなると、文化系の教室が幾つかある分、生徒たちが賑わい始めるのだ。


 新学期初日だけあって、文化系の部室が多いこの3階には、見学にやってきた1年生たちで賑わっていた。

 そんな生徒たちに混じって、那歩は長い一本の通路の中程にある部屋の前に立った。

 その教室札には社会科準備室と書かれている。
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