顧問と私たちと旅行部な時間
「ここでいいのよね」

 準備室の戸をノックし開けると、資料が山積みになっている小さな部屋に、男性教師が一人いた。

 しかし、探し求める教師ではなかった。


「あの、神田先生は……?」


「神田先生なら、隣の第2準備室にいるよ」


「第2……? ありがとうございました」


 一礼して部屋を出ると、隣の教室の札を見た。教室札には張り紙で「第二社会科準備室」と貼られていた。


「張り紙……?」


 張り紙をつまんで、その下に書かれた教室札を見てみると、何も書かれていないただの白い札だった。


 不思議そうな顔をして戸を開けると、狭い部屋の両脇に本棚が並べられ、部屋の奥、窓の前に机に向かった神田耕二がプリントを眺めていた。


「コージ、やっと見つけたよ」


「その名前で呼ぶな。先生と呼べ」


 あきれ気味に那歩を一瞥した後、再びプリントに目を通した。
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