顧問と私たちと旅行部な時間
 那歩はゆっくりと部屋に入りながら、幅の狭い部屋の両脇に並べられた本棚を見てため息を漏らした。


「ヤバイ……。これ全部旅行雑誌……」


 本棚には多少古い物もあるが、各地域の旅行情雑誌が整然と並べられていた。
 まるで本屋のように、所々に表紙を向けて並べられている。
 どうやら、都道府県ごとに表紙を向けているようだ。


 膨大な旅行雑誌の山に目を輝かしている那歩に、耕二は腕組みをして自慢そうに言った。


「旅行雑誌だけじゃないぞ。日本地図、世界地図、鉄道の時刻表だって揃ってる」


「北海道から、京都、沖縄まで揃ってる。海外もあるよ」


 大分の情報誌を手に取り表紙を眺めた。


「湯布院、別府で温泉三昧ぃぃフィ――!」


 発狂する那歩に耕二は「うるせぇぇ」と一喝した。


「高校になっても、まだ落ち着きがないのか」


 那歩と耕二はいとこ同士である。歳は一回り近く離れていたが、耕二は両親共働きで鍵っ子だった那歩の遊び相手を、あり良くしてあげていた。
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