春の香り


その日から僕は、まともに末安と会話が出来なくなっていた。


どうやら、相手の気持ちを知った事で自分の気持ちが揺らぐ事って、本当らしい。



でも、段々と分かったてきたことがある。



本当は、俺のほうが先に末安のことが好きになっていたって事。



初めてオムライスをご馳走になったあの日、末安の笑顔が本当に可愛いと思った事。



彼女の孤独を消してあげたいと思った事。



けど、自分の気持ちに逃げてたんだ。



『早く好きって言えばいいのに』



そんな事は分かってる。



でも、僕が思いを伝えたら、末安に幸せを与えてしまったら。



――君も僕も、お互いの記憶が無くなってしまうのに。



・・・それでも、僕は君に思いを伝えるべきですか?



このままずっと笑いあっていたいと思うのは、僕のエゴですか?




でも、選択肢は一つになってしまった。



僕が『好き』と伝えなければ






・・彼女は幸せでは無くなってしまうから。
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