春の香り

◇◆◇


そして、あれから少したった頃。

僕は委員会で遅くなったため一人で教室に残っていた。


もう、時計は6時をまわっている。


下校時刻も過ぎてしまった。



「お疲れ。」



背後から、聞きなれた声が響いた。



「末安・・・。」



それは、末安愛理だった。


「・・・どうしたんだ?下校時刻・・・・」
「明日、暇?」


「え?」



僕が、話を言い終える前に末安は言った。




「・・・暇だけど・・。」



「じゃあ、どこか遊びに行こう?」



「へ?」



「駅前、午前十時。それじゃ。」


彼女はそう吐き捨てると、教室を出て行った。



その中でなぜか、早い春の香りを感じていた。
< 17 / 20 >

この作品をシェア

pagetop