春の香り
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そして、あれから少したった頃。
僕は委員会で遅くなったため一人で教室に残っていた。
もう、時計は6時をまわっている。
下校時刻も過ぎてしまった。
「お疲れ。」
背後から、聞きなれた声が響いた。
「末安・・・。」
それは、末安愛理だった。
「・・・どうしたんだ?下校時刻・・・・」
「明日、暇?」
「え?」
僕が、話を言い終える前に末安は言った。
「・・・暇だけど・・。」
「じゃあ、どこか遊びに行こう?」
「へ?」
「駅前、午前十時。それじゃ。」
彼女はそう吐き捨てると、教室を出て行った。
その中でなぜか、早い春の香りを感じていた。