春の香り
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「愛理~、本屋寄っていかない?」
末安といつも一緒にいる長島が、教室で末安に問いかけた。
「ごめん。今日はちょっと・・。」
「あ・・そっかごめん。じゃあ、また明日ね。」
その意味深な会話に僕の耳は引きつけられた。
「なあ、末安って、家事一人でやってんの?」
その質問に、長島の顔が曇った。聞いちゃだめな質問だったのか?
「私が言う事じゃないと思うけど・・愛理の家庭結構荒れて・・。石松君は転校生だから知らなかったんだね。」
「・・・そうだったんだ。」
そして、長島は教室を後にした。
よくある話だけど、本当にいるんだなこんな子。
僕の家は両親共に仲が良いから、末安の事情を知ってなんだか胸が苦しくなった。