春の香り
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「どうだよ、最近は。ちゃんと任務こなしてんのか?」
駿は、林檎を齧りつつ、僕に問いかけた。
「ん・・・まあまあさ。それより、それ、どうしたんだ?」
「ああ、林檎?婆さんから貰ったんだよ。せっかくだから食べねえと勿体無いだろ?」
「・・・・なんかさ、最初は任務だと思って接してたんだけど、ずっと世話してやってると放って置けなくなるつーか・・・感情移入しちまうもんだよな。」
途中、急に林檎を齧るのを止めた駿は、ボソリと静かに呟いた。
分かる気がする。
僕も、そんな風に思ってしまうことが度々あるから。
「でも、まあ強いて言えば・・・・俺、生きてる時には既に祖母ちゃん死んでたからさ。ほんとに俺の祖母ちゃんに思えてくるんだよ。あの婆さんが。」
「・・・そうか。」
そして駿は、また林檎を齧り始めた。
「お前はないのか?将太。その、愛理って奴が好きって思うことは。」
「なっ・・・無いって!第一、まだ会ってから間もないのに。」
「ふうん・・・。。」
「なんだよ、その目は。」
「・・・別に?さて、明日が来る前に寝ようぜ。じゃあな。」
僕は後味が悪いままふて腐れていた。