神様、恋をください。
“飛鳥”と“お母さん”
~7月~
初めて外出許可が出た。
菖も華恋も。
「やったぁぁ!!今年は海に行けるね!」
華恋、嬉しそう。
そりゃ、2年に一度の外出だもんね。
梅雨があけても、慶仁はここへ来なかった。待たなくてよかったと思う。
外出かぁ。
私は行くとこないな。
親とは一緒に過ごしたくないし...。
『菖、どっか行くの??』
ウキウキ顔で菖が私を見つめる。きっと、彼氏とだなって思った。
「彼氏と、デート。」
大正解。
大大大大大正解。
『菖は幸せもんだね。最近どうなの??』
「実は...キスした」
kiss
私もした
『いいなぁ。』
「慶仁君とキスしたんでしょ??」
?なんで分かるの?
『えっ?』
「慶仁が言ってたって。最後に思い出に残したいって。」
そんな事、言ってたの?
私、聞いてないよ。
「実はさ...慶仁君、少し前の杏樹と似てる様子なんだって。」
『どういうこと??』
「杏樹が慶仁君のこと想いすぎて体調崩したでしょ?それと同じ症状が...」
『本当?...私、辛かったよ。あの時...』
「今、慶仁君は自分の中で戦ってるんだよ。杏樹とどうするべきかって。」
『...今更、今更遅いのに...もっと早く、言って欲しかった』
「ごめん。華恋に昨日聞いて、秘密って言われたけど無理だった。」
『いいよ別に、もう慶仁、此処へはこないんだし。』
私は無理に笑った
そんな私を、菖は心配そうに見た
『大丈夫だって。もういいの。』
本当は、全然大丈夫なんかじゃない。
もうズタズタ。
あの時のあの空のような心は、もう消えようとしていた。