神様、恋をください。

『...ただいま...』


なるべく小さな声で言った。

今日は日曜日、父が家にいる日。

別に、父は悪くない

でも私はどうしても許せない。

あの日、なんで母を止めなかったのか?今でもずっと疑問に思っている。


「大丈夫。今、義一(よしかず)さん、外出してるからいないわよ。」

『マジ!!よかった。』

「でも、ここにいる限り、義一さんと会うことになるわよ?いいの?」

『...やだ。でもしょうがないじゃん。ここが家なんだもん。』

「まぁね。部屋行く?」

『うん!!もうほこりだらけだろうね。』

「フフッッ。」

『何?』

「なんでもないよ。」

お母さんは何か隠してる。

不思議。

お母さんと話してると楽しい。


2Fの自分の部屋へ行った。



『...!!!!何コレ!!』


部屋には、ないはずのピアノ。


「私からのプレゼント。杏樹ちゃんが入院した年の誕生日に買ったの。」


私は3歳の頃からピアノに通っていた。

将来の夢は音大に入ることで小学1年の時にジュニアコンクールで金賞を取ったことがある。

でも病気のせいで、ピアノの世界から離れなきゃいけなくなり、断念した。


「知ってるわよ。ピアノ、前のお母さんが捨てたんでしょ?」

『誰から聞いたの?』

「義一さん。ピアノ買うためにお金貯めてたんだって。でも、入院費が高くて、買えなかったらしいの。」

『それで、お母さんが買ってくれたの??』

「それでっていうか、ピアノ弾かせてあげたかったの。」

『うち、弾けるかな?』

「え?」

『もう5年も弾いてないんだ。』

「一番最後に弾いた曲は?」

『小5の時に、ショパンの幻想ポロネーズを...』


< 39 / 71 >

この作品をシェア

pagetop