神様、恋をください。
「弾いてみて。難しい曲なんでしょ?」
『だから無理。もう5年も弾いてないのに、ショパンなんて...』
お母さんは私をピアノの椅子に座らせた。
あの日の光景がよみがえった。
この曲はショパンが苦痛の中で作曲して、ジョルジュ・サンドとの決裂と肺病の悪化が背景といわれている。
この曲は最後のコンクールで弾いたんだ。
もう病気だって分かってたから、精一杯弾いた。
私もショパンと同じ。
病気という重荷を乗せられた苦痛と、母との決裂。
今私は、このコンクールの事を思い出しながら弾いている。
間違っても気にせず、もう周りも見えないくらい夢中に____。
「パチパチパチ。す、すごい...」
『弾けた。記憶が残ってた。まだ指が動きを覚えてた!!』
嬉しい。一度は諦めたピアノ。
だもまだ私は弾くことができる、そう思うだけで・・・。
もしも、お母さんがいなかったら
私は、ピアノに触れることができなかった。
私は“飛鳥”というお母さんを
信じます。
お母さん、今までごめんね。
これからはもう酷いこと言わないから。
元気な赤ちゃんを産んでね。
これで、私の中の悩みは消えた。