いつか咲く花【企】


あれから。
本当に茂音君は私の前から姿を消した。

屋上にも、図書室にも居ない。

体育館に行けば、彼の元気な姿は見れるけど、目は一度も合わせてくれない。
もちろん帰りだって一緒にはならなかった。

だから。

あれから一度も、あの大好きな笑顔も見ることが出来なかった。


私に残されたのは、茂音君を想う気持ちと、彼がくれた手書きのノート。


¨アネモネ同盟¨と最初のページに書かれたノートには、種を植える準備や時期、一日事の注意までビッシリ書かれていた。


「6月6日。まだまだ早いよ。植えちゃダメ。」

「6月7日。だからまだダメ。」
       :
       :
「6月10日。雨止まないね?」


毎日一言。

その字は、お世辞には綺麗と言えない字だけれど、丁寧に一生懸命書かれているのが解って…
思わず嬉しくなった。

だけど同時に…

何も聞けないことに哀しさを覚えた……


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