きみの声がきこえない
「じゃあ、あんたにも聞こえるのね?」
あたしは男とファーストフードで向き合っている。
男は陽介というらしい。
「おう」
夕方だっていうのに、
陽介はビッグマックに大きな口でかぶりついている。
そして口にソースをくっつけたままで、
「いいか」と言って、角に座っているカップルを見るように促した。
――あたし、本当にこの人のこと好き?
この人は、本当にはあたしのことを思っていない気がする。
今だって、あたしを見ていない気がする。
――元カノを忘れるために今この子と付き合ってる。
でも、もう限界かな…。
そうやって聞こえた。
陽介はそのまんまを口に出してみせた。
どうやら本当らしい。