きみの声がきこえない
「本当だよ。でも、本当じゃない」
「どういうこと?」
「かばったんだよ。
万引きしようとした奴とか、喧嘩に巻き込まれそうになってる奴とか。声がきこえたからな」
「何でそこまで…」
被害を受けないように、
見てみぬフリしてるあたしとは大違いだ。
陽介は、体を乗り出して力のある切れ長の目で、あたしを見た。
「だってこんな力、自分に与えられた義務としか思えねぇじゃん。神様が俺に与えた能力なんだよ」
「そんな、ばかばかしい」
「だったらお前、黙ってられんのかよ?
こんな悲痛な声を間近で、毎日きいて。何もせずにいられんのか?」
うっ、ときた。