きみの声がきこえない
「いったっ!」
がつんと頭に何かが当たった。
鞄だ。
「あっ、ごめんごめん」
健がいたずらに笑ってみせた。
このチビでベースを背負って、トイプードルみたいな頭をしている夢野健は、
あたしのことが好きだ。
告白されたわけじゃないけど、何となく分かる。
あたしは無駄に勘が鋭いんだ。
「あんたね。毎日毎日、わざとやってるでしょ!?」
「はっ?やってねーよ」
「もー、喧嘩しないー」
友里が隣で呆れながら笑った。
あたしは基本的に友達とは、広く浅くな付き合い方をしてるけど、
友里とはけっこう深くまで付き合ってると思う。