きみの声がきこえない
「秀くんコーヒーが好きなんだね」
「バッハは言ったんだ。
“あぁコーヒー、千回のキスよりも素晴らしく、マスコット酒よりなお甘い コーヒー コーヒーはやめられない”ってね」
「ふーん」
千回のキスという言葉につい反応。
あたしはまだキスをしたことがない。
キスどころか、
ちゃんと恋をしたことがない。
人を好きだという気持ちが、あたしにはまだよく分からない。
「秀くん、カフェとか開けそうだね」
「まだ腕が足りないけど、ちょっと夢だな。
カウンセリングの場を、カフェみたいな場所にしちゃうとか」
「それいい!」