きみの声がきこえない
「好きな人がいたんだ。
彼女は麗香。
俺が大学四年の時、彼女は大学院の二年だった。俺たちはすぐに打ち解けて、付き合うことになった。
彼女も俺と同じように心理学を学んでいた。ただ俺より麗香の方が、スケールを大きく持ってた」
秀くんは、真剣に話をきく子供に、
昔話を話して聞かせるような感じで、優しい顔で、
時々あたしの様子を伺いながら、話を続けた。
「彼女は、世界中の貧困や紛争で苦しんでいる子供達の心のケアがしたいと言っていた。そのためには、語学を学ぶ必要がある。
だから彼女は、オーストラリアに留学することを決めた。それで俺たちは別れることにした」
「どうして?」
思わず口を挟んでしまう。