きみの声がきこえない
「だって、離れてても恋人同士でいることはできるじゃん。
ちょっと寂しいかもしれないけど、でも…」
「自分のことをしっかりやりたいから、
秀二のことを思いやる余裕がない。
充分に思ってあげられない。遠くに離れるから、傍にいてあげられない。
彼女はそう言ってた。
俺は、離れてても支えあうことはできると思ってたし、うまくやれないことはないんじゃないかと思ってた。
でも、彼女の方が大人で、それが彼女なりの俺への思いやりだってことはちゃんと分かってた。
だから、俺は泣く泣くそれを承知することにしたんだよ」
「……」
「まぁ、ちょっと大人ぶったんだな、俺は」
秀くんはそう言って笑ったけど、あたしは何だか沈んでしまった。
秀くんにそんな過去があったなんて。