きみの声がきこえない

陽介――!


その時、教室に陽介が入ってきた。

そしてあたしの手を引っ張って、教室から連れ出した。


「何で?」

「呼んだろ?俺のこと」

「呼んだけど、でも…」


陽介はあたしの腕を掴んでいた手を離して、

あたしの手と取って、強く握った。


「また屋上行くか?」

「授業は?」

「サボり!」


あたしは黙って頷いた。

大きい手に引かれて、いっぱい頷いた。

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