きみの声がきこえない

「お前には分かんねーよ!

分かるわけねーんだよ!」


陽介が声を張り上げて立ち上がった。

怖い顔。

今までこんな表情見せたことなかったのに……。


あたしが動けずにいると、陽介は「ごめん」と呟いた。


「……今日は帰るわ。ありがとな」

陽介はそう言って、ドアの前で立ち止まって俯いた。


「頼むから俺のことで悲しまないでくれよ。頼むから。あと……」


全部、見抜かれてる。



ねぇ、何で?

何であたしには陽介の声がきこえないんだろう?


陽介が自分を卑下する理由は何?


あたしはいっぱい受け止めてもらったのに、

どうして、陽介はさらけだしてくれないんだろう?



“俺のことなんか、好きになんなよ”



ねぇ、どうして?

陽介。

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