きみの声がきこえない

あたしは、陽介の力になりたい。


今、あたしには何が出来るだろう。

色々と頭を悩ませて、陽介の家に訪ねてみることにした。


瓦屋根の一軒屋。

表札が桐谷なのを確認して、近づいていった。


すると、ポストの所に女の人がいた。

パッと目が合い、あたしは思わず背筋を伸ばした。


「家に何か?」


髪が長くて、スタイルのいいその女性は、

不思議な顔であたしを見た。


「あ、あの、私、陽介くんの友達ですが」

「あ、そうなの。あいつ朝からどっか出かけちゃったよ」

「そうですか」

「もしかして、弟の彼女とか?」

「えっ!いえいえ、違います」

「何だ、そっか」


いないなら仕方がない。

あたしはお辞儀して、帰ろうとした。
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