きみの声がきこえない

「よかったらあがってく?」

「え?」

「家、今あたし一人だし」


「ねっ」と押されて、

あたしは「はい」と頷いていた。


これは予想外の展開かも。


外観は日本建築のお家だけど、中に入ると、

廊下はフローリングで、つやつやしててとても綺麗だった。


「うち、最近リフォームしたんだよね」

とお姉さんの優香さんは言っていた。


陽介はこの家に住んでいるんだ、

と何だか不思議な気持ちになった。


通された客間は畳の部屋で、あたしはそこでお茶を振る舞われた。



「何か用だったの?陽介に」

「いえ……あ、はい」

「まったくどこほっつき歩いてんだか」

「いえ、あたしが勝手に来たんで」


優香さんは、その内帰ってくると思うんだけど、

とやるせなさそうにした。



目がきりっとしてる所が、陽介に似てるなと思った。
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