きみの声がきこえない

「え、聞いてない?」

優香さんは思わず口を手で押さえた。


そして、ちょっと考えて、

まぁいいよねと続けた。


「すごく仲良かったの。いっつも喧嘩ばっかりしてた。

まぁそれがあいつらなりの、友情だったんだろうね。それで学校帰りにまた喧嘩して、その最中に横断歩道に飛び出して、赤信号で……」


そんな話全然知らなかった……。


「お通夜の時、あいつ涙ぼろっぼろ流して、圭司くんの家族に膝付いて謝ってた。

俺が不注意だったから、あいつは死んだって言うのよ。でも圭司くんの家族は、誰もあいつを責めなかった。

あいつのことを息子みたいに可愛がってくれてたから」


優香さんはそのまま続けた。
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