ご主人様に首ったけ!
「あのっ、霧様!申し訳ありませんでしたっ」

「露?」


霧様の背中に思い切り頭を下げ謝ると、ようやく霧様は後ろを振り向き私の顔を見てくれた。


「霧様と一緒にいるのに……他の方とのお話に夢中になってしまって……っ。
霧様を怒らせてしまって申し訳ありませんでした……」


両拳を握りながら頭を下げ続ける。


霧様……。
何か、何か言ってください……。


不安をけすように祈り続けていると頭上から霧様の笑い声が聞こえてきた。


「ふっ、あははっ」

「え……」


おかしそうに口元を押さえながら笑う霧様を疑問に思い、目を見開く。


私はてっきり、霧様から“クビ”とか、“もうこなくていい”とか言われるのかと思っていたのに……。

なぜに、笑われているの?


「露は、本当に僕を楽しませてくれるね」

「え……?」

「久しぶりに会った友人なら、話が弾むのは当然だろう?
僕はそんな事では怒らないよ」

「霧様……」


よかった、違うんだ。

でも、ならなぜそんなにも不機嫌に……?


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