ご主人様に首ったけ!
「露!」

「は、はい!」


名前を呼ばれてしまうと、条件反射で勢いよく返事をしてしまう。


「露?」


目の前にいる牧が不思議そうな顔でわたしを見ているのが分かる。

ていうか、クラスの全員?


でも、今は入り口にいらっしゃるご主人様である彼のことしか考えられなくて……。


「お待たせ、露。帰ろうか」

「はいっ。
あのっ、牧も皆もごめん!私、先約があって……。
誘ってくれてすごく嬉しかったよ!またねっ」

「ちょ、露!?」


せっかくの誘いを断ってしまいすごく申し訳がなかったけど、ここまで上がってきてくれた霧様を無下に出来るはずがないから……。


私は慌ててカバンを掴んで、みんなに手を振ると霧様の元へと駆け寄った。


「露、楽しかった?」


みんなが注目する中、霧様は何事もないように微笑みかけてくれる。

それはまるで、初めて小学校に通い始めた子どもを心配するお母さんの様。


「……はい」

「そう、ならよかった。
さ、帰ろうか」


私が短く返事をすると、霧様は私の頭をポンポンと撫でて、先を歩き始めた。

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