ご主人様に首ったけ!
突然陸くんから私に話が戻され、答えに詰まってしまう。


それってつまり、昨日聞いたこの家のメイドさんになるって話でしょ?


まさか、面と向かってやりたくない、なんてことは言えないからさらに言葉が出てこない。



「ぜひね、露ちゃんに来てもらえたらなぁって思って」

「……人手が足りないんですか?」


じゃなきゃ、まだこれから高校生になろうとしている私にそんな依頼はしてこない……と思う。


「いや、そういうわけではないんだよ。
ただ、うちは代々春日の人たちにお世話になっているから露ちゃんさえ良ければ、仲良くしたいな、と思ったんだ」

「はぁ……」

「それに、もうすぐうちの次男が留学から帰ってくるんだ。
だから、その専属になってもらえたらって」

「でもそれって、私じゃなくても……」


さり気なく、ほんとにさり気な~く拒絶を含めて聞いてみたけど……。


「次男の霧はね、極端に他人を遠ざける傾向があってね。
自分のそばに使用人をつけたがらないんだ。
その点、露ちゃんだったら年も近いし、きっと霧も気に入ると思うんだ。
露ちゃんかわいいしね」

「……そんなものでしょうか?」

かわ……!?
って、それは置いといて!

好き嫌いが激しいなら、私だって例外じゃないのでは……?


疑問をそのまま口にしながら、考えていると、隣に座る陸くんが、耳元で悪魔のような囁きをしてきた。

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