ご主人様に首ったけ!
「お帰りなさい、霧様っ!」

「お、っと……。
ただいま、露。今日は大胆だね」

「……」


苦笑されながら頭を撫でられたけど、それでも霧様の胸に顔を埋めたまま離れない。


「……心配させてごめんね」

「……っ」


私の心中を察してくださったのか、そっと抱きしめられ頭上から優しい声が耳に響いた。


「霧様ぁ……っ!
事故に遭ったんじゃないかって……、なにか大きな事件に巻き込まれたんじゃないかって……」

「うん。ごめん」

「ご無事でよかった……」

「露……」


私が霧様にしがみつく腕に力をこめると、霧様も同様に強く抱きしめ返してくれた。


「これからは、なにがあっても露にだけはちゃんと連絡をするよ。
約束」


顔を上げると霧様は綺麗な笑顔を浮かべながら、私の前に小指を差し出された。


「はい、約束……」


目に涙を浮かべながら、私もその小指に自分の指を絡める。

指を絡めただけの小さな約束。


でも、なによりも大事な大事な霧様との約束……。

小指を絡めたまま微笑みあっていたところで、あることを思い出す。


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