ご主人様に首ったけ!
「じゃあねー、露!」

「また明日ね~」

「うん、ばいばい……」


少しだけ笑って手を振り、霧様と共に教室を離れた。


「露、どうしたの?
今日は元気がないね」

「そう、ですか……?」

「なにかあった?」

「いえ、特になにも……」


言えない。

言い出せない……。

でも、全てを言ってしまいたい……。


そんな葛藤が私の中で渦巻き、霧様と一緒にいるのに暗く重い空気にさせてしまう。


霧様とお話していると、今にも涙が溢れそうになる。

それを悟られたくなくて視線を逸らしてしまったため、素っ気ない態度になってしまった。


そのまま無言で昇降口まで歩くと、玄関には今一番会いたくない天使のような容姿の悪魔が佇んでいた。


「露、もう帰るんだ?」

「うん……」


唇を噛みしめながら、視線を合わさないように小さく答える。
< 270 / 374 >

この作品をシェア

pagetop