ご主人様に首ったけ!
下を向いたまま抱えていた服を霧様の前に差し出した。


でも霧様は中々それを受け取ってくれず、服を持つ手はすごく震えていて今にも落としてしまいそう……。


「……露、ここを出て行くつもり?」

「……そのつもりです」


神くんは。

家は出なくてもいいと言った。


でも、こんな気持ちのまま霧様と一緒にいられるわけがない。

だから私は神くんに従うと決めた時、東條の家も出るつもりでいた。


「だめ、と引き止めたら?」

「っ!!
……ご、めんなさい……」


霧様のそのたった一言に、心が動かされてしまいそうになる。

その言葉の嬉しさに、決心が鈍りそうだった。


「……そっ、か…。わかった。
でも、露が嫌じゃないならしばらくは……。
いや、こんなこと未練がましいな」

「霧様……」


私の勝手で別れを告げたのに、まだ引き止めてくださるのですか……?


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