ご主人様に首ったけ!
コンコン、と扉をノックすると予想通り、すぐに零さんの返事が返ってきた。


「零さん……」


零さんは、お仕事がたくさんあるからいつも起きるのが早いってい綺ちゃんが言っていた。

だから、一言挨拶をしてからここを出て行きたかった。


「露ちゃん?どうしたの?」

「零さ……っ、ごめ、なさ……っ。
私、霧様のメイド、辞めます……」

「え!?」


突然の私の申し出に、当然零さんは驚いている。

でも、たとえ零さんに引き止められたとしても私の気持ちは変わらない……。

変えられない――……。


「どうして?」

「それは……っ」


理由を聞かれることは分かっていた。

でも……。


「ごめんなさい、聞かないでください……」


嘘をついても見破られそうで……。

本当のことを話してしまいそうで……っ。

どうしても、その理由を口にする事はできなかった。

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